トラック昇降設備義務化の背景と目的

2023年の労働安全衛生規則の改正をきっかけに、
最大積載量2トン以上のトラックには昇降設備の設置が義務化 されました。
この法改正の背景には、トラック業界で長年問題となってきた
荷台への昇降時の転落事故の多さ があります。
とくに5トン以上の貨物車では、墜落・転落事故が重大災害につながりやすく、
死傷事例も多く報告されてきました。
1|義務化が進んだ背景
荷役作業中の災害の「7割」は荷役が原因
トラック運送事業における労働災害のうち、
実に 約7割が荷役作業中 に発生しています。
さらにその中の約4割が、
荷台へ昇り降りするタイミングで発生する転落事故 です。
トラックの荷台は地面から1m〜1.5m以上の高さがあるため、
飛び乗り・飛び降り・不安定な足場での作業が繰り返されると、
負傷リスクが非常に高くなります。
特に近年は以下の状況が加速し、事故が増加傾向にありました。
・ ドライバーの高齢化
・ 一人作業の増加
・荷台の大型化・高床化
・ 忙しさによる安全確認の不足
労災の構造的問題が明確になったことで、
国として「昇降設備の標準化」が必要 と判断されたのです。
2|昇降設備義務化の目的
昇降設備の設置には、次のような明確な目的があります。
① 転倒・墜落リスクの大幅低減
昇降専用のステップや階段を設置することで、
作業員は無理な姿勢を取らずに荷台に昇降できます。
これにより
・着地の衝撃
・ バランス崩れ
・ 足場の滑り
などの危険を大幅に減らすことができます。
② 労働災害の予防と負担軽減
ドライバーや作業員の高齢化が進む中、
「飛び降り」や「踏み台の代用品の使用」は危険度が高く、
膝や腰を痛める要因にもなります。
昇降設備の導入は、
安全だけでなく 身体への負担軽減 にもつながり、
長期的には業務効率や健康維持にもメリットがあります。
③ 法令遵守の明確化
労働安全衛生法・労働安全衛生規則に基づき、
企業には 作業者を危険から守る義務 があります。
昇降設備を設置しない場合、
労働基準監督署からの是正指導や罰則の対象になる可能性があります。
「努力義務」ではなく
法的義務であることが明確化されたことが今回のポイントです。
3|どんな車両が対象になるのか
義務化の対象は車種ではなく、「作業条件」によって決まります。
● 最大積載量2トン以上の貨物自動車
軽トラは対象外ですが、2トン車〜大型車までは幅広く適用されます。
● 荷役作業を行う車両
平ボディ・ウイング車・バン・ダンプカーなど
荷物を積み下ろす作業がある車両は基本的にすべて対象です。
● 荷台や積載位置の高さが1.5m以上の場合
地面から荷台までの高さが1.5mを超える場合、
昇降設備が必須と判断されます。
※ダンプカーも例外ではありません
積み込み確認、荷台清掃、点検などで昇降が頻繁に発生するため
義務化の対象となります。
4|トラック昇降設備の種類
現場の状況に合わせて、次のような設備が使用されています。
① 階段型ステップ
しっかりとした踏面と手すりが特徴で、
荷台へ安全に昇降できる最も一般的なタイプ。
② スロープ(ラダー)
荷物と作業員の昇降に使える傾斜形。
台車・カゴ車をそのまま上げられるため倉庫・配送現場で多用されます。
③ 昇降ステップ(折りたたみ式・レール固定式など)
平ボディやウイング車で多く採用。
必要な時にすぐ使え、収納もコンパクト。
特に最近は、
ラッシングレールの穴にワンタッチ装着できるタイプ
が現場で人気です。
5|昇降設備がもたらすメリット
義務化対応というだけでなく、
企業と作業者にとって多くのメリットがあります。
● 労災リスクの減少
重大事故の多くを占める「転落」を防ぐことができます。
● 作業効率アップ
安心して昇降できる環境は、結果的に作業スピード向上につながります。
● 企業としての安全意識の向上
安全対策への投資は、取引先からの信用にも直結します。
● ドライバー不足対策にも有効
安全・快適な環境を整えることで、
女性ドライバーや高齢ドライバーにも働きやすい環境を提供できます。
6|まとめ
トラック昇降設備の義務化は、
単なる規制強化ではなく、業界全体の安全レベルを引き上げるための取り組みです。
・荷台昇降は高所作業であり、事故発生率が高い
・労災の約7割が荷役作業、4割が昇降時に発生
・昇降設備の設置は作業員の安全と健康を守る「必須対策」
・作業効率向上・企業価値向上にもつながる
企業は、昇降設備を適切に設置・管理することで、
安全で快適な作業環境を整備し、法令にも適切に対応できます。
安全対策を強化することは、
結果として現場の生産性向上、労災削減、人材確保にもつながる重要な一歩です。
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